ボッチャで「絶対にやってはいけない一手」

― 上級者ほど「良い球」を投げない理由

ボッチャには、反則ではないけれど、**戦術的に「やってはいけない一手」**があります。

それは――

「投げる意味のない一球」です。

きれいにジャックボールの近くに止まった。

相手のボールを見事に弾いた。

自分のボールをさらに1球増やした。

一見すると、どれも「ナイスショット」に見えます。

しかし、ボッチャで本当に重要なのは、

「その球が上手く投げられたか」ではありません。

「その一球によって、試合がどう変わったのか」

です。


①「相手のボールを弾けば正解」は大間違い

ボッチャでは、相手のボールが邪魔なら、

「とりあえずヒット!」

と考えてしまいがちです。

しかし、ヒットしたことで本当に自分が有利になるのでしょうか?

例えば、

  • 自分が1点リードしている
  • 相手のボールがジャックボールから少し離れている
  • 自分のボールはすでに得点圏にある
  • まだ自分にも残り球がある

この状況で、意味もなく相手のボールを弾く。

すると――

相手のボールを動かしたことで、逆に相手が攻めやすくなることがあります。

さらに、自分の得点ボールまで動かしてしまえば、せっかくの1点を失う可能性もあります。

つまり、

「弾ける」=「弾くべき」

ではありません。


②「良い球」と「良い判断」は違う

ここがボッチャの面白いところです。

例えば、ジャックボールのすぐ横にボールを止める。

技術的には素晴らしい。

でも、そのボールによって相手が簡単にヒットできるのであれば?

その一球は、本当に「良い球」でしょうか。

逆に、

ジャックボールから少し離れていても、

相手が攻めにくい場所に置く。

これが戦術的には「良い球」になることがあります。

ボッチャでは、

「どこに止めるか」だけではなく、
「相手に次に何をさせるか」まで考える。

これが重要です。


③ 一番危険なのは「自分がやりたいこと」

上級者になってくると、

「この球を投げたい」

という気持ちが出てきます。

得意なヒット。

きれいに寄せるアプローチ。

しかし、

自分がやりたいプレーと、今やるべきプレーは違います。

例えば、

「ヒットが得意だからヒットする」

ではありません。

考えるべきなのは、

「今、このヒットをする必要があるのか?」

です。


④ 投げる前に「3つの質問」

次の一球を投げる前に、上級者なら最低でもこの3つを考えたいところです。

QUESTION 1

この球で何が変わる?

得点が増えるのか。

相手の得点を減らすのか。

ジャックボールの位置を変えるのか。

次の一球を投げやすくするのか。

何も変わらないなら、その球は本当に必要でしょうか?


QUESTION 2

この球を投げた後、相手は何をする?

ここが非常に重要です。

自分の一球だけを見るのではなく、

「相手の次の一手」

まで考えます。

自分が良い場所に置いたつもりでも、

相手に簡単なヒットを与えてしまうかもしれません。

逆に、少し地味な一球でも、相手の選択肢を2つ、3つと減らせるなら、それは非常に価値があります。


QUESTION 3

失敗したとき、何が起こる?

これも重要です。

成功したときのことだけを考えてはいけません。

例えば、

「ここを決めれば2点取れる!」

でも、失敗したら?

相手に簡単なヒットを与えるかもしれません。

ジャックボールを動かしてしまうかもしれません。

自分の得点ボールを崩してしまうかもしれません。

つまり、

「成功したら何点取れるか」だけではなく、
「失敗したら何を失うか」

まで考える必要があります。


⑤ 「1点を取る」より「相手に2点を取らせない」

ボッチャでは、常に得点を増やせばいいわけではありません。

例えば、

現在1点リードしている。

この状況で、

2点を狙ってリスクの高いプレーをするのか。

それとも、

1点を守って相手の逆転を防ぐのか。

これは全く違う戦い方になります。

特に終盤では、

「もっと点を取りたい」

という気持ちが、逆に危険になることがあります。


⑥ 「何もしない」という選択肢

ここがボッチャの奥深いところです。

良い選択肢は、

「寄せる」

「弾く」

だけではありません。

場合によっては、

「あえて大きく状況を変えない」

ことが最善になる場合があります。

相手が難しい状況にいるなら、

無理に攻撃して相手を助ける必要はありません。

つまり、

「自分が何かをする」のではなく、
「相手に難しいことをさせ続ける」

という考え方です。


⑦ 本当に「絶対にやってはいけない一手」とは?

結論です。

ボッチャで「絶対にやってはいけない一手」とは、

状況を理解せずに、自分の技術だけで選んだ一手です。

ヒットが上手い。

アプローチが上手い。

それ自体は素晴らしい技術です。

しかし、

技術があることと、その技術を今使うべきことは別です。


🎯 ボッチャは「投げるスポーツ」ではなく「選ぶスポーツ」

ボッチャが上手い選手は、

「どこに投げるか」

だけを考えていません。

その前に、

「なぜ、そこに投げるのか?」

を考えています。

さらに、

「この球を投げたら、相手はどうする?」

そして、

「その次に、自分は何をする?」

ここまで考えて初めて、一つの「戦術」になります。


最後に

ボッチャでは、

ナイスショットが必ずしもナイスプレーとは限りません。

きれいなヒット。

完璧なアプローチ。

それでも、その一球が試合を悪い方向へ動かしているなら、

それは「上手い球」でも「良い一手」ではありません。

だからこそ、次の一球を投げる前に考えてみてください。

「この球を投げることで、試合は本当に自分に有利になるのか?」

この問いを持てるようになると、

ボッチャは「狙った場所に投げるゲーム」から、

「相手との未来を読むゲーム」

へと変わっていきます。

そして、上級者になるほど――

「投げる技術」以上に「投げない判断」が重要になるのです。

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じゃっくまん

JACKMAN

JAPAN BOCCIA CLUB 代表

「たのしそー」から「たのしむへ」それが、最初でした。
投げて、考えて、ときには教えて。
「やってみたら」「できちゃって」
スポーツの見方が変わったり、人との出会いが増えたり、
「うれしかったり」「ドキドキしたり」
今まで気にしなかった「なぜ?」が気になったり。
そして気づけば、
ボッチャに関わることで、世界の見え方まで変わっていました。
「笑顔になったら」「輝いた」
そんな、ボッチャから広がる世界を
じゃっくまん目線で綴っています。

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